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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

線上閱讀木暮 理太郎《山の憶い出 上(ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 頁

青空文庫

切明けの幅は一間もあり、両側に轍の跡のような溝が掘ってあるから、少しも紛れる心配はない。木は皆矮小で、風雨氷雪という自然の庭師の手になったものとはいえ、如何にも面白く風情ある姿をしているので、配置の整っている所では庭園でも歩いているような気がした。二千三十六米の三角点に着いたのは午後十二時十五分。ここから再び東北を指して国境の切り開けと合する。もう其辺は広漠たる一面の大雪田で、ほんの爪先上りに北の方へ高くなっている。雪解の跡と見たのは幾つかの沼で、沼と沼との間には或は右から或は左から、黒木立が墨絵のようにぽうとにじみ出している。何という広い頂上であろう、北アルプスの五色ヶ原でも之には及ばない。絶頂と思われる方を眺めても、真白な大きな櫛形の線がかすかに霧の中に浮んでいるだけで、行けども行けどもはてしがない。

どこかで日のさす気配がして、霧が薄れて来た。忽ち眼界が開けて間近く亜鉛葺の小屋が見えた。一間四方位のお籠り小屋である。其処に荷物を置いて、雪田と木立の境に沿い、絶頂の巨岩の下に達したのは午後一時である。岩の上には小さな銅像仏が安置され、賽銭があげてあった。