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おもいちがいものがたり
思い違い物語
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《思い違い物語(おもいちがいものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 44,840 字 · 88 頁
が、ここではそれに触れる必要も余白もない、単直に三者会談を紹介するわけであるが、満信と山治との質問は、ひと口に云うと、「泰三を赴任させた真意はどこにあるか」ということであった。
「それをきかれると少し困るのだが」
知宣はちょっと迷惑なようであった。
「少なからず困るのだが、しかし云わぬわけにもまいるまい」こう云って、やや反省的な眼つきになられた、「――二人とも典木兄弟の父の出来事を知っているな、うん、斎宮が光泉院(故長門守知幸)様の侍女を殴り、御手許金二千両を着服し、そして切腹したあの出来事だ」
古い話が出たので、こちらの両老職は眩しいような顔をした。知宣はさらに反省の調子を強め、「泰三をこちらへよこしたのは、実は、彼が斎宮と同じような立場になりそうだったからだ」そこで言葉はかなり沈痛になった、「――光泉院様のことを申すのは忍びないけれども、斎宮の着服した金二千両は、事実は寵愛の侍女の費消したものであり、またその侍女はいろいろの点で光泉院様を、……なんと申したらよいか、その、……俗にいうところの、つまり瞞著しておったというわけで、斎宮はかなり手を尽したらしいが、ついにあのような方法で事態を収拾したという」