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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《怪しの館 短編(あやしのやかた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 頁
一枚絵の女
一
ご家人の貝塚三十郎が、また芝山内で悪事をした。
一太刀で仕止めた死骸から、スルスルと胴巻をひっぱり出すと、中身を数えて苦笑いをし、
(思ったよりは少なかった)
でも衣更の晴着ぐらいは、買ってやれるとそう思った。
歌麿が描いた時もそうだった。衣裳は俺が買ってやったものだった。春信が描いた時もそうだった。栄之の描いた時もそうだった。衣裳は俺が買ってやったものだった。
豊国が今度描くという。
どうしても俺が買ってやらなければ。
新樹、つり忍、羽蟻、菖蒲湯、そういった時令が俳句に詠み込まれる、立夏に近い頃だったので、杉の木立の間を洩れて、射し入る月光はわけてもすがすがしく地に敷いては霜のように見えた。
その月光に半面を照らした、三十郎の顔は鼻が高いので、その陰影がキッパリとつき、美男だのに変に畸形に見えた。
足もとの血溜まりに延びている死骸――手代風の男の死骸にも、月光は同じように射していた。まだビクビクと動いている足が、からくりで動く人形の足のように見えた。
「とうとうあのお方は憑かれてしまった。お気の毒に、お可哀そうに」
ずっと離れた石燈籠の裾に、襤褸のように固まって始終を見ていた、新発意の源空は呟いた。