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あくじゅうへん

悪獣篇

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《悪獣篇(あくじゅうへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,715 字 · 73 頁

青空文庫

」――

と肩がすくんで、裳わなわな、瞳を据えて恐々仰ぐ、天井の高い事。前後左右は、どのくらいあるか分らず、凄くてすことさえならぬ、蚊帳に寂しき寝乱れ姿。

十五

果して夢ならば、海も同じ潮入りの蘆間の水。水のどこからが夢であって、どこまでが事実であったか。船はもう一浪で、一つ目の浜へ着くようになった時、ここから上って、草臥れた足でまた砂を蹈もうより、小川尻へ漕ぎ上って、薦の葉を一またぎ、邸の背戸の柿の樹へ、と銑さんの言った事は――確に今も覚えている。

艪よりは潮が押し入れた、川尻のちと広い処を、ふらふらと漕ぎのぼると、浪のさきが飜って、潮の加減も点燈ごろ。

帆柱が二本並んで、船が二艘かかっていた。舷を横に通って、急に寒くなった橋の下、橋杭に水がひたひたする、隧道らしいも一思い。

石垣のある土手を右に、左にいつも見る目より、裾も近ければ頂もずっと高い、かぶさる程なる山を見つつ、胴ぶくれに広くなった、湖のような中へ、他所の別荘の刎橋が、流の半、岸近な洲へ掛けたのが、満潮で板も除けてあった、箱庭の電信ばしらかと思うよう、杭がすくすくと針金ばかり。