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すうことのほそく
数言の補足
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《数言の補足(すうことのほそく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 1,813 字 · 4 頁
本年三月号の『文芸』で森山啓氏と伊藤整氏とが、森山氏の「収穫以前」について文壇的な礼譲ある往復書簡体の感想を書かれたことがあった。あの文章は、二人の真中に一つのブランクをおいたままその周囲を廻っている感じであった。ブランクというのは「収穫以前」で作者森山氏は主題の更に重厚な展開のために、主人公のような社会層のインテリゲンツィアと家族関係との奥に潜められている心理的因子を主人公の側からとらえ、掘り下げる必要があったことを心付かずにいた。そのことを伊藤氏も全く見落していられた。「幽鬼の町」を読んで、当時の文章を思いおこしたのには、連関があるのである。
現実がもし単に機械的に、潔癖でわり切れてゆくものならば、文学を通して訴えんとする人間的苦悩は生れないのである。昏迷や作品の上での無解決が問題ではなく昏迷・無解決そのものの社会的・心理的因子と作者の企図する動向が芸術の胚種であることは誰しも知っている。作品の読後感がそこに触れざるを得ない理由もここにある。
作家の主観というものは、それだけにたよっていると危ない。潮のきつい海の上で当人は一生懸命こっちへ向っていい気持に漕いでいるつもりだのに、数刻経て見たら、豈計らんやかくの如き地点に押し流されて来ていた、という場合が決して少くない。