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しんたからじま
新宝島
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《新宝島(しんたからじま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 99,590 字 · 197 頁
保君がおどけた調子で言いましたが、その実、内心ではゾーッとしているのです。黒い波頭が、何だか大きな怪物の背中のように見えて、じっとしていると、無性に怖くなって来るのです。
「ア、わかった。わかったよ」
とつぜん舵手の哲雄君が叫びました。
「ここに強い潮流が流れているんだよ。僕達はその中にまきこまれたんだよ」
海の中に強い勢で一方に流れている川のようなところがあります。それを潮流とか海流とかいうのです。
「ア、そうだ。潮流だね。じゃ、ここを突切れば静かな所へ出るんだね。サア、保君、漕ごう。ウンとがんばるんだぜ。哲雄君、舵をまげてくれよ。潮流を横切るんだから」
一郎君が力づけるように叫びました。そして、二人は又オールにしがみついたのですが、もう疲れているものですから、思うように漕ぐことも出来ず、いくらがんばっても、ボートは流されるばかりです。潮流の幅がどのくらいあるのか、漕いでも漕いでも、なかなか突切れないのです。
「いけない。風が吹いて来たよ。ホラ、あんな大きな波が……」
哲雄君が叫びました。三人の頬にサーッと風が吹きつけました。そして、見る見る黒い波が高まり、ボートは矢のように流されるのです。