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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
宮の森に陽もうらうらと高くなった頃おいである。松平元康の先駆は、足なみ揃えて街道を打たせて来た。弓の列である。
すこし距てて、一群の騎馬隊が燦々と手綱轡をそろえて来るのが見えた。中ほどにある年歯まだ二十一、二歳の弱冠が元康その人だった。何か用もなげに通りすがった人のように、平然と鞍上に揺られていた。
けれど前後を取り囲んでいる三河譜代の面々は、さすがに鉄のように硬ばった顔をしていた。一髪の隙もない緊張を示していた。石川数正、酒井忠次の両家老以下が固めている。
いかに和議は成っても、盈ち溢るる春光と、平和は謳われても、ここの地上は、四十年以来、互いに父祖の代から鎬を削り合って来た敵地である。初めてこうして四十年ぶりに、平和な服装で国境を越えたのである。感慨なきを得なかった。――と同時に、まだ心の底からの安心はなし得なかった。
社前へかかる。
元康は馬を降りた。
休息――
信長から向けられた出迎えの者に対して挨拶がある。そしてふたたび列はすすんだ。三河衆の供人は、総勢で百二十騎と数えられた。
元康の随臣たちも、清洲の町へはいると、初めて和んだ眸となった。