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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
北征
こうして信長は、一ぷくの茶の間に、大きな収穫をして引き揚げたが、その折、彼の傍らにいたひとりの男は、後に、信長へ向ってこういった。
「御主君。あなたは、せっかく宝の山に臨みながら、まだ、大きな名器を見のがして、拾い残しておいでになりましたな」
それは、当日もいた木下藤吉郎であった。信長は、眼をみはって、
「何。もっとよい名器があったと申すか」
「ありましたとも。――千宗易という人間です。あんな名器を、なぜお眼に止められなかったか。惜しいことでした。もっとも、後となっても、遅くはありませんが」
「ウむ、うむ。……なるほど、あれはいい茶碗だった。そのうち所望しよう」
ふたりは、頷きあって、微笑んだ。
北征
信長の京都進出以来、天下の耳目は、彼の行動にばかり気をとられていた。
眼に見えて、時流のうちに新人旧人が入れ代ってゆく。法令が改まってゆく。世態風俗までが徐々に変ってゆく。
(ここはどうなるだろう?)
たいがいな者が、自己の小さな生活の周りしか見なかった。
それも、恟々として、劇しい法令の出るたび、一喜一憂していた程度であるから、この中央の激変から、ひいては次の時代への大きな推移に、確と、見とおしをつけていた者は尠ないし、その機会をつかんで、信長の進出を、直ちに、自分の進出とし――自分の千載一遇とした者など、ほとんど