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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
「無理もない。――だが、実は人いちばい強いあの人の野心が、よい縁にめぐまれて、真っ直ぐに伸びれば大したものだが」
と、つぶやいて、後から独りで津の称念寺へ立った。
京都の大乱は、天下の大乱である。当然、主家にも、余波があろう。何かと、変に備えて、公務も忙しくなっているにちがいない。
光秀は、それを思い、また、
「いたずらに世を拗ねて、小事に気を腐らしているなど、壮者として恥ずべきだ」
と、自分をも顧みて、翻然と、朝倉家の城下へ帰ったのである。
皮膚病は、山代の温泉で、すっかり癒えていた。さっそく、義景の君前に出て、
「長らく怠りましたが、病も癒えましたれば、立ち帰って参りました」
と、お礼に出たが、
「よく癒えた。よく帰った」
とも、義景はいわなかった。
ただ、
「そうか」
と、一言あったのみで、何となく、君前もおもしろくなく、光秀は引き退った。
その後、お召しもない。
変だ? ――と思って帰藩後の様子をいろいろ察してみると、彼の留守中に、彼のあずかっている鉄砲組にも、代役が立っているし、四囲の空気すべて、彼のために不利な形に変っていた。
義景の彼に対する信頼も、近頃はまるで以前と変ってみえた。