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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
――云いも終らぬうちだった。彼の足もとの濠水に、二、三発の銃弾が魚のはねたように水をあげた。
藤吉郎は、一尺も動かなかった。耳のそばを、ひゅるッ――と掠めた弾もあった。
鉄砲の音はすぐ止んだ。城兵はもとより狙撃したのではない。彼の度胸を試してやろうと揶揄ったものである。その間に、城主の耳へ報じられていたものとみえて、山路弾正のすがたが、櫓に見えた。
弾正も、そこから大音で、
「木下藤吉郎とやら、山路弾正はこの方であるが、信長の使いとは、何事を申しに来たか。両軍合戦のまっただ中、信長から慇懃をうくる理由はないが、それにて申してみるがよい」
と、いった。
藤吉郎は、遠く一礼して、
「いや、いやしくも某は、戦いに勝った織田方の使者でござる。貴下は、孤塁に拠って、なお千余の勇猛を擁し、北畠家の忠臣をもって任じておらるるが、事実において、敗軍の将である。――敗軍の将が、勝利の使者を、城下に見下して、物を問うも異なものである。――ここでは主君の意を申すわけに相成らん。それがしを城内へ迎え、正当の礼を執られたい」
聞くと、弾正は、
「あははは。わはは。――見たところは小さいが、愉快な大言を吐く男ではある。