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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
「やい。於虎」
「なんだい」
「ちょっと来い」
「どこへさ」
「どこへでもいいからちょっと来い。ちびのくせにお前は生意気だぞ」
人のいない奥庭へ、於市は於虎を引ッ張って行った。そして、拳をかためて、於虎の頭の上にそっと乗せた。
「於虎、やい」
「…………」
「この拳をみろ」
「…………」
於虎は、頭のうえの於市の拳を、額ごしに見あげながら、
「見えない」
と、いった。
「――見えないと」
於市は、拳の尖った所で、於虎の頭をぐりぐり押した。於虎は、顔を顰めた。
「どうだ。……見えなければ、これで味が分ったろう。おれの拳はそっとやっても、こんなもんだ。ちびの新参のくせに、あまりのさばると、このお拳に風をくれて、ぐわんと、くらわすぞ」
「…………」
「欲しいか」
於虎はまた、顔を顰めながら、その顔を横に振った。
「これから、わしのいうことをきくか」
「きく」
「わしに反かないか」
「うん」
「じゃあ、きょうだけは、堪忍してやる。こんど生意気なまねしたら、石垣の下へ投げ飛ばすぞ」
於市は、威張って先に歩いた。於虎は、彼の威嚇にすこし恐れをなしたらしく、悄れ返って従いて行ったが、指の先にまろめていた鼻くそを、於市の襟元へポンと弾いて、くすりと口を抑えて笑っていた。