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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
「わあッ」
と、武者声あわせて、そこの土塀へかかり出したのであった。
本国寺には将軍の義昭がいたからである。
まだ入洛早々なので、幕府の政庁も将軍の第宅も普請にかかっている間がない。――その館のできるまでを、新将軍は、本国寺を仮の住居としていたのである。
前将軍義輝は、松永弾正のために、不意討ちをうけて、その居館の焔の下で斬死にした。――またもその酸鼻な殺戮が、真昼中、太陽の下に演じられるかと、本国寺のなかは既に名状もできない混乱に陥ちた。
急を聞いて、
「――すわ」
と、駈けつけて来た藤吉郎の一隊と、奇襲の敵軍とのあいだに、忽ち市街戦が始まった。それは本国寺と七条道場との通路の辻であった。市街戦は午頃から夕方に迫っても、なお続いていた。
附近の民家の戸や壁まで血に染まった。血のついた家が焼かれていった。
しかも勝敗はまだつかない。
警備軍の織田兵は、初めから少数だったが、藤吉郎の指揮によって、辛くも持ちこたえていたのである。それだけにまた、味方の苦戦はいうまでもない。
すると、薄暮の頃。勝ち誇って殖えるばかりだった残党軍が、一角から崩れだした。――と思うと、それが木ッ葉微塵となって、粉砕され始めたのも実に早かった。