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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
違背する者は断罪に処す。
一時は、今にもここへ、信長の大軍が殺到するような流言が飛んだので、港町は、混乱をきわめ、
「すわ」
と、南北堺の町民は、女子供や老人などは、みな根来、粉河、槇尾などの由縁のある田舎へ、逃がしてしまった。
それとまた――
ここは遠い大内氏の時代から、南蛮、中国、琉球などとの交易の要港で、経済的には、旧くから日本のどこの都会よりも発達していたので、富豪が軒をならべていた。京都や諸国の城下では見られない異色のある文化も、ここにだけ爛漫と濃く新しさを誇っていた。
経済地の恐慌は、不景気よりも何よりも戦争の跫音だった。――足弱の避難につづいて、堺の財貨は、日々、堺の外へ搬出されて行った。
けれどそれは、阿波三好党の反信長軍から、多額な「矢銭」を徴発された後だったから、黄金としては、ほとんど少なかった。――多くは貿易の商品と家財と――それと天下の名品はここに集まっているといわれる程な――堺町人たちの秘蔵している茶器骨董などであった。
その一騒動がすむと、町は急にがらんと物音も変って来た。若い女の姿がぱったりと見られなくなった。そして、北之荘の端れだの、遠く市中を離れた丘と丘とをつなぐ所などに、毎日、塹壕が掘られ始めた。