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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
船へは、宗易の弟千宗巴、銭屋宗納が、使いとして乗った。奈良の浪人、土門源八郎も、附き添って行った。暗い波騒の真夜半、船は、三好党の見張りの眼をしのんで、沖へまぎれ去った。
その船は、夜明け方には、もう大坂の安治川へはいっているだろう。――そしてそこから、誰か上陸って、信長の陣へ駈け込む。――堺の領民のほんとの総意を訴え出る。
「これでいい」
宗易は、安心した。同時に、死も覚悟していた。
勿論、彼だけは、茶室を出ると、再び、三好党の陣所へ引っ立てられていたので、その後の指図には当っていなかった。
いかめしい武士に囲まれて、十河存保の陣屋のうちに寝ながら、
「今頃は、首尾よく、船は岸を離れたろうか。夜明け頃には、織田殿の陣所へ、使いが行き着いておろうか」
などと想像してみるのであった。――そしていずれにせよ、自分の一命は、その事の発覚と共に、ないものと、観念していた。
朝となると。
朝飯も与えられず、武士たちが来て、尾いて来いという。
南宗寺の南縁へ彼は曳かれていった。
「それに控えて、お答え申しあげろ」
と、ひき据えられ、宗易は、茶室に坐るように、静かに座に着いた。