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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
四十にも五十にもなる大人のような感じをうけた。
「それは、木下の申す言葉に、この家康も同感です。――これ以上金ヶ崎一城に、日を費やすのも、兵を損じるのも、策を得たものではありませぬ」
「では、なにか、それをなさずに、敵の本拠へ迫る御案がありますか」
「まず、木下へいわせてごらんなされい。その男、何か考えておるに違いありますまい」
「藤吉郎」
「はい」
「そちの策を申せ」
「策などありません」
「なに」
驚きの眼をしたのは、信長だけではなかった。家康もすこし異な面持をした。
「城内、三千の兵をもって、お味方の十万の大軍もうけようと、決死の念にかたまっている城壁です。小城とはいえ、容易に陥ちるわけもなく、また、策など用いても、ぐらつく筈はありません。――ただ人間の真情と誠意だけは、先も人間である以上、感じるだろうと思われるだけです」
「始まったな」
信長は、それ以上、ここで藤吉郎の舌をうごかさせたくなかった。礼を厚く、最高の味方とは遇しているが、家康はあくまで三遠二ヵ国の主将であって、織田家の内輪の人ではない。――また、藤吉郎が何を考えているか、綿密に語るのを聞いた上でなければ、彼を信じられないほど、藤吉郎の器量を知らない信長でもなかった。