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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
「運不運、死も生も、天にまかせて西の沢から駈け下りろッ。渓流に沿って逃げるのだッ。あの水は琵琶湖へさして落ちてゆく。あの水の早さほど走れよかし。――命びろいは、早いもの勝ちだぞ!」
戦えとはいわないのである。いかに藤吉郎でも、二日二晩の不眠不休をつづけている飢餓の兵を用いて、法師武者の数知れない伏兵を打ち破ろうなどとは思わない。
むしろ、この際、彼の胸は、このいじらしい手勢の中から、一兵でもよけいに助けて都まで帰してやりたい――。そういう気もちでいっぱいだった。
大慾は大勇猛心を出す。生きようとする以上の勇気はない。藤吉郎の命令一下、
「わあッ」
と、飢え疲れた兵も、凄まじい勢いで、一方の沢を逆落しに突破した。
無茶である。戦法とも捨身ともいえない乱暴さだった。なぜならば、檜林の窟には、やぶ蚊のように、僧兵がかくれていたのだ。わざわざ敵の中を駈けて通ったようなものだった。
が、かえってそれが、敵の虚をついて、用心ぶかい敵の伏兵陣を支離滅裂に踏みやぶったのである。駈け込む時は、てんやわんやであったが、渓流に沿って南下する方角は一致していた。
「琵琶湖が見えた!」