輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁

青空文庫

松波は、その機に、

「亀一のお稽古は、今日だけおゆるし下さいませ。まだ顔いろが蒼うござります。唇も腫れ上がって見えますれば」

「ム。……では連れて行け」

小六は、妻の手へ、槍と子とを預けたが、

「余り甘やかすな。また、良いことに思うて、書物ばかり与えるな」

と、いいつけた。

彼もそのまま書院のほうへ歩み出し、沓石へ草履を捨てかけた。――ところへまた、先刻の家人が、首を振りながら駈けて来て、

「お頭領、いよいよ不審な男です。どうしても立ち帰りません。のみか、いつの間にやら、脇門を通って、厩の方へ勝手に立ち入り、馬番や庭掃除の者などつかまえて、馴々しく雑談などしております」

「抓み出せ。織田家の廻し者など、なぜ容赦しておくか」

「いや仰っしゃるまでもなく、武士部屋の面々も出て、戻らねば土塀越しに抛り出すぞと、脅しつけましたところ、もう一遍取り次いでくれ、十年前、矢矧川(矢作川)でお目にかかった日吉といえば、きっと思い出していただけよう――などと云い、てこでも動く面構えではございません」

「――矢矧川で?」

どうしても思い出せないのである。矢矧川といい、日吉といい、十年も前の路傍の一些事は、小六正勝にとってもう念頭にもなかった。