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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁

青空文庫

蜂須賀村へ帰るには、ただ平然と、以前の面をさげては帰れぬと、あなたへ謝罪する折を口ぐせに申しているので――他事ながら、これもちょうど折かと、わざと、それがしの駒の口取させて伴れ参りましたわけ。……血は水よりも濃いとか。叔父甥のあいだがら、どうぞ、以前の如く、御一族睦まじく、行く末の御繁栄をお計りあるように」

藤吉郎に、側からそう取り做されると、小六も、十年前の甥の罪を威猛だかに、今いう気にもなれなかった。

藤吉郎は、小六の虚心になった隙を外さず、

「天蔵。――荷駄に積ませてきた金銀を、御門内に運び入れたか」

と、訊ねた。

その天蔵へ物をいう時は、当然、部下に命じる言葉であった。

「はい。降ろしました」

「そうか。では、お目録と共にお眼にかけよう。小者に申して、これまで運んで参るように」

「はッ」

と、天蔵が行きかけると、小六はあわてて、

「待て天蔵。それを受けては、この小六正勝の立場がない。織田家に随身を約したことになる。――熟考いたす間、しばらく待て」

遂に、彼の顔いろは、苦悶をさえ呈して来た。そういうとついと起って、奥へかくれてしまったのであった。

急に家の内がしんとしたように静かだった。