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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁

青空文庫

――チ。虎めが、何を?

と、面倒臭がッているように、いかにも不機嫌な歩きつきで来る。

敵が築城中である洲股の西岸――その真正面から、左右二里余にわたる地域に、常備およそ六千の兵を配置して、その指揮作戦の一切を、稲葉山の本城から命ぜられている不破平四郎種賢だった。

「不破殿。ご足労をかけたな」

「陣中、労などいとわぬが、この方に御用とは何か」

「あれについてだが」

大沢治郎左衛門の指さす対岸の彼方へ、不破平四郎は眼を導かれながら、

「洲股の敵か」

「いかにも。――朝夕おぬかりなく御監視とは思うが」

「仰せまでもなく、当所一円はこの方の持場、御安心ねがいたい」

「――と、先にいわれると申し難いが、この大沢も上流の地ながら一方の固めは受け持っておる。鵜沼口のみ守ればいいというものではない」

「もとよりのこと」

「で、時折は、舟を泛べ、または沿岸を歩いて、下流まで状況を見に参るが、今日まいって一驚を喫した。――もう手遅れと申してもよい程なのに、御陣地を窺えばのんびりしたもの。何かお考えあってのことか」

「手遅れとは、何がであるか」

「敵の築城の意外に進んでいることを申す。――ここの岸より何気なく一見しただけでは、まだ二重堤、縄取内の土盛り、それと石垣が半ばぐらいしか出来上っておらぬように見えるが、あれは、敵の計と申すもの」