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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

士魂煌々

もう抵抗いはいたさん。縛れッ」

うしろへ手を廻して、動かずにいた。ざわざわと桑の葉音が寄って来た。そして縄尻を取られて彼は出て来た。

巡視の将校は、強右衛門のすがたを、今さらのように、じっと瞠目して、頭の先から足の先まで見て、

「長篠の者か。岡崎の者か」

と、訊いた。

強右衛門は、つつまずに、

「長篠の者だ」

と、答えた。

士魂煌々

勝頼の声は誰よりも大きい。

床几に倚せているその体躯のように。――また帷幕を圧しているその威厳のように。

彼は激してもいた。

「いつにない各※(二の字点、1-2-22)の弱腰。馬場、内藤、小山田、山県など、四隣に聞えた武勇の輩も、いつか年には克てず老いられたとみえる。――この勝頼が眼には織田の三万は、声のみの虚勢、徳川の七、八千などは、鎧袖一触にも値せぬ。何をさまで怖れるか、勝頼には解せぬ。……跡部ッ、大炊介ッ、そちの思案はどうだ、憚らずいえ」

「おそれながら――」

と、陣幕の西側に坐していた大炊介は、すこし進んで、

「さき程よりわざと、大炊のひかえておりましたのは、意外や、余りにも宿将たる老臣がたの御意見が、一致して、退陣をおすすめ申しおる様子に――実は心外ながら、信玄公以来の弓矢もかくばかり衰えたことかと、ひそかに涙していたわけでござりまする」