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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁
と、席を立ちかけた。
すると、陣幕の外で、
「穴山梅雪が手の者、八尾栂之介でござる。主人梅雪はお席におられましょうや。御評議中とは存じまするが、火急を要することゆえ、おうかがい致しまする」
と、郎党の大声がした。
「おうッ、八尾か」
評議も終ったところなので、梅雪入道は一隅から答えながら立って行った。そしてしばらく幕外に姿をかくしていたが、やがてあわただしく戻って来て、
「ただ今、自分の部下が、奥平家の士、鳥居強右衛門なる者を、引っ縛って参りました。御陣中に紛れ入って、人夫のていに身を窶しておりましたものの由――何かよほど大事な密命を帯びて城中から脱出したものらしく考えられます。どう計らいましょうか」
と、まず取調べ方の処置を仰いだ。
勝頼は、折も折なので、測らぬ獲物とよろこんだ。自身、取調べてみよう、と云い出しただけでも彼の期待したほどが窺われる。
すでに、宿将たちは、あらかた立ち去ったが、なお勝頼のまわりには、残余の将星が綺羅やかであった。
一介の軽輩。見るも見すぼらしい人夫すがたの強右衛門は、その中にひきすえられ、薪を加えて、さらに焔を新たにした篝の火に明々とその横顔を照らされていた。