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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁
秀吉のよい機嫌に免じているばかりでなく、必ずしも彼は秀吉という男を嫌いにはしていなかった。秀吉もまた光秀とまずい感じを抱き合ったことなど一ぺんもない。つねに生真面目な彼にたいして、よく臆面もない冗談など云いかけるが、尊敬すべきところでは充分尊敬を払っていた。
で、光秀も、
(この男、用うべし)
と、許している風であった。
古参な点や、帷幕の席順からいえば、秀吉のほうに、彼より一日の長があったが、他の宿将と同じように、光秀の心裡にも、家格とか、生い立ちとか、教養とか、いうものを偏重する考えはやはり潜在していた。――決して秀吉を軽んじる気ではないらしいが、土岐一族の名門という自尊と、また、実世間の体験や新時代の教養をも兼ね備えた知識人とみずからゆるしている自負が自然、
(君は愛すべき男だよ)
というような、何とはなく、彼を下に見る態度にどこか現われて来るのだった。
彼の一性格といえよう。人から下に見られたと感じても、秀吉はそれを不快としたことはない。
やがて将来、自分に期するところがあるゆえかも知れないが、さればとて、
(今に見ろ)
などとは、かつて一度も、口外した例はない。