輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

鹿之介も、馬を降りて、河原にのぞむ大きな岩に腰かけていた。

「足弱な子達や女房方を、さきに渡舟で川を渡しますから、しばらくは御休息あるように」

紀伊守は、かさねていった。

鹿之介はうなずく。

きょうばかりでなく、彼はこの頃意識して、

(要らざる口は開くまい)

としているように、無口な人になっていた。たいがいな場合――召し連れている郎党たちにさえ――ただ頷くだけが多かった。

紀伊守は去って、渡舟の混雑へむかい、何か岸から声をかけていた。

渡舟は、一、二艘しかない。順々に人が山のように盛られて対岸へ運ばれた。鹿之介と苦労を共にして来た三十余名の郎党のなかに、彼の妻や幼い子も、埋もれるように船の中に乗せられていた。

その船を見やりながら、岩にかけて、肌の汗をおし拭っていた鹿之介は、

「……彦九郎」

と、呼んで、側にいた従者の後藤彦九郎に、手拭を渡し、

「冷たい川の水で、ひとつこれを絞って来てくれい」

と、いいつけた。

もう一名、鹿之介の側を、始終離れずにいた柴橋大力介も、鹿之介の乗馬を曳いて、川の岸へ下りていた。

馬に水を飲うために。

青い翅の虫が、キチキチキチキチと、鹿之介の身をめぐっていた。