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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

形では上下の区別があっても、そのときその治下の民衆は大きな安心と国家の泰平を感じるからである。

信長はそういう庶民性をよく見ていた。

蘭奢待を賜わるべく、勅許を仰いだのも、一個の身に、名香の薫りを持ちたいだけの小慾ではなかった。むしろ自己の光栄と存在を、全土の民衆のうえに薫々と行き渡らせたいための盛事だったというほうが適切であった。

また、こういう行事から、彼はたちまち、公卿京紳の文化人と接触し、深交をむすんで行った。

彼の趣味は、観世の能、幸若の舞、角力、鷹狩、茶の湯――などであったという。

愛馬趣味もあった。

一面に文化人と融和を計りながら、信長はまた決して、民衆を置き去りにはしなかった。

自分の愛馬六十頭を出して、加茂の馬場で大競馬を催し、それには莫大な費用と善美をつくして、市民の観覧をゆるし、数日にわたって、一般の老幼男女を楽しませた。

けれど彼は、何をして遊んでもそれに溺れない自己をいつも持っていた。相国寺へ三条、烏丸、飛鳥井の諸卿を招いて、蹴鞠を催したときである。

今川義元の一子氏真は、蹴鞠の名手といわれていたが、その日も、晴れがましく装束して、庭上で得意の鞠を蹴って見せた。