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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁
――信盛、はやく使いに立て」
「はい。……では御意のごとく半兵衛に伝えまするか」
「念を押すには及ばん」
と、いよいよ機嫌わるく、
「祐筆、書けたか」
と、眸を転じる。
「認めました。御一見を」
「どれ……」
と、床几へ取りよせて、それをすぐ使番頭安藤惣五郎に手渡し、即刻、播磨へ早打せよといいつけた。その早打がまだここを出ないうちであった。麓から蜂屋頼隆がのぼって来た。そして信長の前へ出て告げた。
「ただ今、筑前どのが、御陣内まで着きました。すぐこれへ見えられましょう」
「なに、筑前が?」
瞬間、激色は激色ながら、信長の面の怒りは、ふと眉の辺に、すこし晴れたかの如く見えた。
やがて秀吉の声がする。いつもの快活な響きである。信長は囲い隔てて、
――来たな。
と、耳に知ると、それまでの不機嫌とまずい顔つきを、強いてでも、持ち怺えていようと努め出した。
ふしぎな心理といわねばならない。あれほど激怒していたのに、陽に会った氷のように、胸の怒りの解けてゆくのを彼自身どうしようもなかった。秀吉が来たと聞いただけでそう変るのであった。
「やあ」
と、云いたげな調子で秀吉は囲いのうちへ入って来た。