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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁
――とはいえ、元よりそれは、九死一生の僥倖をのぞむこと、死を覚悟して出なければならん。……行くか。参ってくれるか」
「おゆるし下されば、ありがたいしあわせでござりまする」
強右衛門は飽くまで大言を吐かないのである。見ている者でも不安なほど、平身低頭したままであった。
「たのむぞ」
貞昌は、その一言を、満腔からいった。城兵五百の生命と、徳川家の浮沈のためだ。主君とはいえ、彼のほうからこそ、手をついて頼みたいところだった。
「行け。――強右衛門、抜け目はあるまいが、充分の注意を払って、城を出よ。よいか」
「はい」
「そちが、身支度をととのえるあいだに、岡崎の兄貞能へ宛ててつぶさに書面を認めておく。なお城中の切迫している実情は、直接御主君家康様へ、口上をもって申しあげるように」
「かしこまりました。――こよいの夜半から明け方までの間に、お城を出、河を越えて、首尾よく敵の眼をくらまして脱出できましたら、雁峰山の頂から、狼烟をあげて合図いたしまする」
「むむ。狼烟を見たら――事成れりと思うているぞ」
「もし、明日の午までに、峰より狼烟の揚らないときは、あわれ強右衛門奴の事成らず、むなしくも敵の手に捕われて果てたものと思し召して――直ちに第二段の策をお立てくださりますように」