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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁
御城門までお通しください」
身なりを見れば、甲州方の人夫。顔や髪は、汗と土にまみれている。あらゆる苦心をして敵地を駈け抜けて来たことは、多くを訊かないでも、その姿に見えていた。
「なに、長篠を脱出して、これまで使いにおいでたとか。鳥居強右衛門どのといわれるか」
「はいッ。はい。――主人奥平貞昌の御書面を帯し、昼夜をわかたず参りました。城中五百の生命はいま一刻をも争うほど危急に迫っておりまする。何分、気も急かれておりますれば、即刻、通行をおゆるし下さいますように」
もちろん警固の武者たちは、すぐ徳川側へ、この事を報じ、同時に、彼を伴って、城門まで送り届けた。
貞昌の兄、奥平貞能は、そう聞くと、
「えッ、強右衛門が? ……。あの鳥居強右衛門が来たとか」
むしろ疑いたいほど、愕きもし、歓びもして、あわただしく城中の密室に彼を迎え、
「ど、どうしたッ……?」
一言、そういっただけで、あとは、胸を衝きあげられていた。強右衛門の惨たる姿を見、また、孤城を守る少数な味方の辛労、ひいては骨肉のことも、咄嗟に考え出されたからであろう。
「……ぶ、無事に、お顔を拝しまして、使いの役、これで」