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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

強右衛門はなお意気地がない。平伏したまま泣いていた。ただし――ここまで着いたぞと思う欣し泣きであった。

「見、見せい、早く。……貞昌の書面とかを、持参いたしたそうではないか」

「はッ、これに……」

胸を正すと、強右衛門は汚い着物の下襟を、ぐっと帯から上へ引きあげて、その縫目へ咬みついた。

糸を破る。そして襟の中へ、芯のように秘して来た一通の書を、貞能の前へさし出した。幾重にも幾重にも油紙につつんである。封を切って読み下した。貞能もついに落涙を禁じ得なかった。

――城中の士気は旺んとある。弾薬は尽きたが、なお甲軍を叩きつぶす岩石の有るあり、とも書いてある。

けれど、いかんせん兵糧だ。強右衛門がお城へ着く頃は、おそらくもう二日の糧しかないであろうと告げている。

最後に。

覚悟はしかと決めている。万事休すとあれば、五百の部下の生命に代って、それがしが切腹するまで。

けれど、けれど。

この五百の部下は、たとえ一命だけは助けようとしても、怖らくは、何人生きのこるか。甲軍の手にかかって生きるを潔しとしないであろう。

ただ、今待つものは、全城をあげて、首を長くしているのは、お味方の救援のみ。