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しんのあいこくしん

新渡戸稲造論集

新渡戸 稲造

線上閱讀新渡戸 稲造《新渡戸稲造論集(しんのあいこくしん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,620 字 · 196 頁

青空文庫

第二は、無闇に人を区別せず、また責めない点である。たとえば、議論をするにしてもその相手を選ばず、またその題目をも別に選ばない。そして、目的は、相手を負かそうとか、自分の主張をあくまでも徹そうとか、そういう浅薄な野心は毫末もない。ただ自分を忘れて、道のために議するという風の態度がありあり見える。だから、およそ志のあるものは誰でも相手にして、少しも意としないのである。

第三には、高慢な人でなかったということを数えたい。当時、ソクラテスは具眼者から先生といわれるほどの尊敬を受けていながら、微塵も高ぶる風がなかった。また当時、アテンの政治は民主主義であったが、しかし、その制度の下にも、不思議なことは、高慢な人が沢山いた。そして、ソクラテスばかりはその例に洩れていた。してみると、ソクラテスの人物の高慢臭くなかったのは、時代の然らしめたところというようなことが言えなくなる。私は、この徳をソクラテスの性得に帰するよりも、寧ろ修養の結果と看做すことの妥当なるを信ずるものである。

第四には、年が行っても、油断せずに、修養を持続した点である。とかく、吾人は、いくらか名前を知られ、人の尊敬を贏ち得るようになると、忽ちもう偉らくなったような気がして、心が弛み、折角青年時代に守り本尊としていた理想を、敝履の如く棄て去るのが多い