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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本の怪談(二)(かにのかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 頁
と、赤鬼が云った。老婆は話の中から頷いていた。
「それは、もう、そんなことをなにしに申しましょう、黙って執って来ますから、どうぞ待ってくだされ」
「そんなら好い、待ってやる」
と、青鬼が云うと、老婆は急いで表の方へ出て往った。青鬼と赤鬼はその後を見送って、耳を澄ますようにしていた。
老婆の雨戸を締めて出て往く音がした。青鬼は手にした鉾を襖に立てかけた。
「旨くいったな」
「うむ、旨くいった」
と、赤鬼も鉾を襖に立てかけた。
「すこし休もうか」
と、青鬼がまた云った。
「よかろう」
と、赤鬼が同意した。そして、二疋の鬼は其処へ胡坐をかいた。
「脱いでも好いだろう」
「そうじゃ、脱いでもいいな」
二疋は首の周囲に手をやって、何かかさかさとやっていたが、やがて赤鬼からさきに鬼の顔を除ってしまった。皆鬼の面を着ていた者であった。赤鬼の面を着ていたのは、壮い色の白い男で、青鬼の面を着ていたのは、頬髯の濃い角顔の男であった。
「旨くいったな」
「大丈夫じゃ」
青鬼の方の男は行灯の灯で、仏壇に供えてある餅を見つけた。
「好い物があるぞ」
と、彼は起って仏壇に手をやり、二つの餅を執って来て、一つを赤鬼の男にやってその一つを己の口に入れた。