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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本の怪談(二)(かにのかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 頁
台場とは藩政時代に外夷に備えるために築いた砲台で、小山のようになった土塁の上には大きな松などが生えていた。私達はその台場の南側の草原で旗奪をやった。それは尖の方に縄切を結えた大きな竹竿を建て、両組に別れた少年達がその下に押し寄せて、敵方の妨害をしながら隙を見て竹竿に攀じ登り、解いた縄切を味方に執らすように投げて、其処へも迫って来る敵方を排し除けて首尾良く味方の陣地に持ちつける遊戯であった。
私達はその旗奪を数回やって休んでいたところで、何人かが小さな声で、
「あれが見えるか、あれが見えるか」
と、云うので眼をあげると小さな一つの手が東の方を指している。何だろうと思ってその方へ眼をやると、それは八番のあれの陸の方になった松の梢に蒼白いぼうとした月の円さ位のものがあって、それが見ているうちに螢火のようにばらばらになって下へ落ちてしまった。私の頭には八番の陰火と云うことが思いだされた。と、また松の上に火の団が見えて、見えたかと思うと、またばらばらに散った。私の頭はじゃんとして体が痺れたようになった。私の側にいた寅という少年は泣いた。
この旗奪の夜の怪異は、今から考えてみると実在の怪異であったか、それとも怪異の恐怖の中から創作したものであったか、それはどうもはっきりしないが、その後にあった一つの怪異は実在のもので