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にほんのび

日本の美

中井 正一

線上閱讀中井 正一《日本の美(にほんのび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 96,126 字 · 187 頁

青空文庫

そこでは個人と個人の関係が最初の関係ではない。絶対的な全体がどこからか出現して、その部分としての個人が自分であることをいつのまにか受け取るように強要されはじめるのである。かつてアリストテレスがいいだし、後の機構が自分のものとして適用したヒエラルキー的な半封建的身分的な世界観が、もっと乾燥して、もっと強力な抽象性をもって、個人主義の上にオッカブさってきたのである。この単調に堪えきれずして、戦線の中に飛びだしていったのである。

自由通商主義の段階の個人の場合は、こころもちの上にしたしみがないではなかった。今は「人が人に対して狼である」「人を見たら泥棒と思え」という一度バラバラになった個人が、何かの目的でカキ集められるのであるから、それは困難というよりはむしろ陰惨となってくるのである。

世界のロマン派が個人の力をその拠るところとするかぎり、いくら狂っても狂いきれないのである。自分にわからぬ機構が自分の意図に似たものを示しては、ついには他のものにヒキ歪められて現われるからである。『夜明け前』の半蔵の狂いもそれにほかならない。自分はあるいは狂っているかもしれないと思いながら、現実に思いをひそめている半蔵の姿はこの世界観そのものの限界を示しているといえるのである。