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にほんのび
日本の美
中井 正一
線上閱讀中井 正一《日本の美(にほんのび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 96,126 字 · 187 頁
のなかの、飢えた虎に自分の身をなげすてて、それを救う題目を選んでいるのであります。日本人が多くの物語のなかから最初にめぐりあった驚きが、そこに描かれています。
ころもを脱いで、木にかけ、断崖よりとんで飢えたものを救うために身を放つ精神は、巌を用いて、闇を裂いていく天の岩戸のすがすがしさを、新しいこころでもって嗣いでいるのであります。
日本の禅も、感覚的にこの断崖に、手を放って身を放擲することを説いてやみません。日本化した浄土教もまた、こころを虚しくして、おのれをなげすてることを、窮極の教えとして捉えるのであります。
要するに、常に生きているというしるしのさわやかなるものをとどめ、くさり、汚れるものを脱ぎすてて、清く新しく、生き生きしたところのものに、身をひるがえして飛び込んでいくところのものを、いさぎよしとするのであります。
『万葉集』の美しさ、「さやけさ」といい、『古今集』の「わび」、または世阿弥のいう「幽玄」といい、中世のいう「すき」といい、さらに江戸時代が好むところの「いき」の美しさといい、それを貫いているものは、すべて前にいったようなこころぐみを、時代時代が、その時その時の表現でもっていい表わしたかと思われるのであります。