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あねがわのかっせん

日本合戦譚

菊池 寛

線上閱讀菊池 寛《日本合戦譚(あねがわのかっせん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 154,771 字 · 313 頁

青空文庫

慎で命を全ふすべしと仰せ出されければ、正行頭を地につけて、兎角の勅答に及ばず」

場所は古来伝称の吉野山である。君臣の義相発して情景相具った歴史の名場面ではないか。かくて共に討死を誓った一行は後醍醐天皇の御廟に詣で、如意輪堂の壁に各姓名を書き連ね、その奥に有名な「かへらじと」の歌を書きつけたとある。だが、これはうそである。普通に常識の有る者が、御陵の傍のお堂に、勝手な落書をして行くなんて、考えられないのである。まして、正行の如き純粋な忠臣に於てをやだ。楠公万能の義公であるから仕方がないとしても、『大日本史』までもが『太平記』の真似をして「同盟の姓氏を如意輪堂の壁に題し、歌を其の後に書して曰く」とやって居るのは、どうかと思うのである。恐らく、名前は寺の過去帳に書いて行ったのであろう。それが今、如意輪堂に行くと、堂々と此の歌を書きつけた扉が残って居る。書きつけた壁でも残って居るのならまだしも、扉になって居るのは二重の間違いである。

然し、少し嘘がある方が、歴史は美しい。児島高徳の桜の落書と云い、『太平記』にも大衆文芸の要素があるのだ。

四条畷の戦は正月五日に起って居る。