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あねがわのかっせん

日本合戦譚

菊池 寛

線上閱讀菊池 寛《日本合戦譚(あねがわのかっせん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 154,771 字 · 313 頁

青空文庫

折しも、時ならぬ雷雨が襲って、鬱然たる山峡は益々暗い。天の時なりと考えた少将は、進軍喇叭を吹かしめ、突進させた。しかし敵弾雨よりも繁しくて、徒らに多くの死傷を出すに終った。此時の戦に、谷村計介も戦死したのである。計介は始め、第十三連隊長心得、川村操六少佐の旗下で、熊本籠城の一人であった。殊死して守城するに決心した谷少将は、何とかして守城の方略を官軍の本営に伝えたいと思った。そこで川村少佐に相談した処、少佐は計介の為人を知って居たから、この重大任務遂行の使者として、之を少将に推薦した。計介は任務重大であって、その任でないと固辞したが、一度引受けるや、死をもって遂げる事を誓った。顔から手足まで、煤を塗って人相を変え、夜陰に乗じて城を抜け出し、南関へ行こうとして、忽ちにして捕えられた。しかし必死の計介は、監視の薩兵が居眠りして居る隙に、爪で縄を断ち切って逃れた。この辺一帯、薩軍の眼が光って居るので、風の声にも心許さず、やっと吉次山中まで潜り込んだ処を、再び捕えられた。異様の風体で、山中を徘徊して居たものだから、てっきり官軍の間諜と目星を指されて、追究拷問至らざるは無しである。