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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁

青空文庫

彼の老妻や、他の娘や、娘たちの婿なども寄りあつまったが、客座敷ではなく常の食事をする室で、各自膳で車座になってお酒も出た。

「いや、どうも、かくお手厚い御饗応にあっては恐縮のいたりで――」

木魚の顔が赤くなって、しどく豊に、隠居じみた笑いを浮べて、目をショボショボさせながら繰返していっていた。

「老爺さん、こんどこそはひとつモノにして下さい、なにしろ君にいためられた皆が浮かばないよ。こっちの家だって、なんだかんだって大変だあね。」

そういったのは姉娘の婿――遠州では仲人にたった旗本だった。

「それは大丈夫だ、こんどはウンと皆をよろこばせる。」

もうその頃は七十位だったのであろうが、遠くへ単独でゆくような様子だった。

「味噌も米も困らないように送ってあるから。」

と彼の老妻はつぶやくようにいった。そしてみんなが何処へか送っていった。

「牛肉の佃煮でも送ってやったら――」

父がその後、母にむかっていっていた。

「だが、今度もあてにはならないぞ。」

そういうふうに彼は二年も三年も漂然といなくなって、現れるとムッツリとした風貌を示し、やがてまた人々に送られて、至極満足そうなニコニコ顔で出かけた。