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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁

青空文庫

旧聞日本橋

鼠小僧の住んでいた、三光新道のクダリに、三光稲荷のあったことを書きおとした。三光稲荷は失走人の足止の願がけと、鼠をとる猫の行衛不明の訴をきく不思議な商業のお稲荷さんで、猫の絵馬が沢山かかっていた。霊験いやちこであったと見え、たま、五郎、白、ゆき、なぞの年月や、失走時や、猫姿を白紙に書いて張りつけてあった。その近くに鼠小僧の隠れ家があったわけになる。

油町あたりの呉服商の細君であった祖母が、鼠小僧の人柄なぞをどうして知っていたのかと思ったら、そのころ祖母夫婦は、楽屋新道――葺屋町、堺町、などの芝居に近い――の附近に住っていた。場処がらで気らくに暮していたと見え、近所の岡っ引の細君と仲をよくしていたという。自然そんなことから鼠小僧の引廻しも見たのであろう。

七ツのアンポンタンに、九ツのアンポンタンに、十一、十二のアンポンタンにおぼろげながら近くの町の人の生活ぶりや身近な人たちのそれがぼんやりとうつってきて、言様のないさびしさと、期望しても期望しても満されない佗しさがあった。譬えて見れば、お正月になったら賑かだろう、――賑かだろうという漠然とした思いのなかに、子供の空想と希望と理想が充満している。