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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁
寒中など水鼻汁をたらしながら、井戸水で、月の光りで鎌を磨いでいたり、丸太石をころがしていたりする。日和のよいころ芝を苅るときは、向うの方と、此方のほうで向いあいながら、
「いや、手前一向に武芸の方は不得手でげしてな。」
「いや、剣法でもなんでもあのコツだ。どうして、霧にかくれるというが、あなたの豁谷を渡るあれだ、あの※吸といったら、実際たいしたものだ。」
「いやどうも、そう仰しゃられては汗顔のいたりだ。」
――だが、私が松の木の上にいる父を、老人の冷水だとよびにゆくと、小さな声で、
「じいさんはやめたか?」
と訊く、湯川老人の方へゆくと、
「や、もう、お父さんの若いこと若いこと、感服のいたりだ。」
と腰をのばす。この、老たる婿と、舅と姑が、どうした事か、毎日の、どんな些少な交渉でもみんな私のところへ、一々もってくるのだった。三人の老人が、年寄らしいイゴで三すくみのかたちで、不平も悦びも感謝も、みんな私のところへもってくる。
「婆さんが腰をぬかして――なんともうす腑甲斐ない女か。」
湯川老人がそう言ってゆくと、入代りに父が来て告げる。
「祖母さんが築山に座って、祖父さんに小言をいわれている。