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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁
だまって苦悩をになってゆく。痩せた、小柄な、あまりパッとしない彼女の芸妓姿を、いたわり撫でたい気持ちで遠くながめていた。アンポンタンは成長するにしたがい家内のなかの異端者としてみられていたから、どうする事も出来ないで、抱えの時分、流山みりん瓶入の贈物をもってくる彼女の背中を目で撫ていたが、彼女におとずれた幸福は、彼女にはあんまりけばけばしい色彩なので、信実はやっぱり苦労が絶ないであろうと痛々しかった。なぜなら、らんまんたる桜の咲きさかる春のような、または篠つく豪雨のカラリと晴れた、夏のような風情は彼女にはそぐわなかった。もっと地味で、堅実な愛が、彼女を待たなければ真の幸福とはいえないように思えた。私が彼女にあうことはより遠々しくなった。
放蕩児が金を散じる時の所作はまず大同小異である、幇間にきせる羽織が一枚か百枚の差である。芸妓のとりまきが一流と二流の相違は、料亭待合の格式、遊ぶ土地、すべての附合の範囲と広さにおよぼしている。中村鴈治郎が東都の人気を掴得しようとすると歌舞伎座から「まだ旦那のお招きをうけないが――」と頼みこんでくる。摂津大掾が来た、何が来たと東京の盛り場の人たちが大阪でうけるお礼のかえしを、一手に引受けるほど遊びに顔を売った旦那を彼女は旦那にしたのだった。