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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁

青空文庫

人形町通りは、昔の三座や、その他の盛り場のあった名残りで、日本橋区中の繁華な場処なのに、大門通りは大商家が、暖簾をはずし、土に箒目をたてて、打水をすましてしまうと、何処もひっそりしてしまって、大戸をおろした店蔵の中では、帳合がすむと通いの番頭さんは住居に帰り、あとは夜学――小僧たちが居ねむりをしながら、手習や珠算の練習をやる。尤も、大門通りは名のごとく万治の昔、新吉原へ廓が移けない前の、遊女町への道筋の名であるゆえか、大伝馬町、油町、田所町、長谷川町、富沢町と横筋にも大問屋を持つ五、六町間の一角だけがことに堅気な竪筋なので、住吉町、和泉町、浪花町となると、葭町の方に属し、人形町系統に包含され、柔らいだ調子になって、向う側の角から変ってくるのが目にたっていた。そして、劃然とではないが、もうそのあたりは大門通りとはよばなかった。大門通りの突当りといった。突当りの感じのするように和泉町が押出していてそれから道幅がせまくなり、ゴミゴミした裏に、松島町の長屋があったのだ。

大門通りでは、屋台店も、表筋の道路へは遠慮して出なかった。横町の、人形町側へ出はずれかける場所に、信用されている品のよい店が秋から春まで一、二軒出た。