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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 158,045 字 · 322 頁
おおかめさんの御機嫌にさからうと、
「どいつもこいつも、みんな出ていけ。」
と家中のものが、一集めに頭から怒鳴られる。お品よく、お品よくと、お附女中から、大番頭さんの女房まで揃えても、ともすると夏は諸はだぬぎになったりして、当り屋仲間の細君が、以前から大家だったように勿体ぶっているのと、歩調が合わなくなると、
「あのお虎婆め、常磐津もろくに弾けない、もぐり師匠だったのを、わすれやがったか。」
と自分のおさとまでぶちわって、向う角の、蔵造りで、店は格子を閉めてある、由緒ありげに磨きあげて、構えこんでいる黒光りの角蔵を睨んで、その奥座敷におさまる比丘尼婆の、絽の十徳を着た女隠居に当りちらすのだった。
おおかめさんは八丁堀の古着屋の娘、近所の古鉄商の若い衆で、田舎出だが色白で、眼鼻立のはっきりしたのに惚れこんだのだ。若い衆の方は、金がなくても、夜寝床から裸でぬけだして、駕籠で飛ばして行くと、吉原で花魁がたてひいたんだと、紳士になってからも、湯上りにはすっかり形式をかなぐりすてて、裸になって、手拭を肩へかけ、立膝でお酒をのんで、土用のうちでも、蔵前のどじょう汁だとか、薬研堀の鯨汁好みが、汗をふきふき、すっかり紳士面になりきってしまった仲間をこきおろすのだった。