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ほんじょみぞれがし

本所霙河岸

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《本所霙河岸(ほんじょみぞれがし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,115 字 · 24 頁

青空文庫

「いいとも、久しぶりで教えて頂こう」

「ではお嬢さま」

省吾は松枝に向って云った、

「御位牌を道場へお移しください」

そして立上った。

松枝はお繁とともに、父の位牌を捧げて道場の上段へ飾った。――そのあいだに省吾と千之助は身支度をする、素面素籠手に木剣。……門人たちは一隅へ退って列座した。

二人は位牌に礼拝すると、

「――いざ」

と云って左右へ離れた。

その時である、省吾は木剣を青眼に構えたまま、大きな声で、

「佐渡屋!」

と呼んだ。

「佐渡屋、……そこに横井の脇差がある、――抜いて鑑定をしろ」

「――へえ、へえ」

庄兵衛は訳の分らぬ顔で隅のほうへ行った。省吾の木剣は千之助の眼前鼻梁をぴたりと押えたまま動かない。

「――あ!」

という庄兵衛の声。

「佐渡屋、兼元であろう」

「か、か、兼元でございます、あの晩の兼……」

「なかごを検ろ」

千之助の木剣がゆらりと揺れた、呼吸が早くも乱れ始めた。五年の修業で省吾の腕は段違いになっている、千之助の額にじりじりと脂汗が浮きだした。

「先生、秋山先生」

庄兵衛がおろおろと叫んだ。

「か、仮名銘です、仮名銘兼元です」

「よし引込んでいろ」