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やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《柳橋物語(やなぎばしものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,300 字 · 202 頁

青空文庫

前篇

一

前篇

一

青みを帯びた皮の、まだ玉虫色に光っている、活きのいいみごとな秋鯵だった。皮をひき三枚におろして、塩で緊めて、そぎ身に作って、鉢に盛った上から針しょうがを散らして、酢をかけた。……見るまに肉がちりちりと縮んでゆくようだ、心ははずむように楽しい、つまには、青じそを刻もうか、それとも蓼酢を作ろうか、歌うような気持でそんなことを考えていると、店のほうから人のはなし声が聞えて来た。

「いったいいつまでにやればいいんだ」

「無理だろうが明日のひるまでに頼みたいんだ」

「そいつはむつかしいや、明日までというのがまだ此処にこれだけあるんだから、まずできない相談だよ」

「そうだろうけれど、どうしても爺さんの手で研いで貰いたいんだ、そいつを持って旅に出るんだから」

「旅へ出るって」源六のびっくりしたような声が聞えた、「……おまえが旅へ出るのかい」

「だから頼むのさ、爺さんに研ぎこんで置いて貰えば安心だからな、無理だろうけれどそれでやって来たんだよ」

庄吉の声だった。おせんは胸がどきっとした、庄さんが旅に出る、出仕事だろうかそれとも、そう思ってわれにもなく耳を澄ました。

「そうかい」