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やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《柳橋物語(やなぎばしものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,300 字 · 202 頁

青空文庫

自分では意識しなかったが、その手紙のおせんに与えた印象は決定的だった、突込んで云えばおせんは顔つきまで変った、庄吉を思うそれまでの感情は、十七になった少女のものでしかなかった、現実と夢とのけじめさえ定かならぬ、ほのかな憧憬に似てあまやかなものだった。然しその手紙を読み遠い見知らぬ土地と、そこでひたむきに稼いでいる彼の姿を想いやったとき、おせんの感情は情熱のかたちをとりだした、十七歳という年齢はもはや成長して達した頂点ではなく、そこからおんなに繋がる始点というべきものとなったのである。

或る日の午後、杉田屋から源六を呼びに使いが来た、そんなことは絶えてなかったし、用事もはっきりしないので、源六はちょっとゆき渋ったが、追っかけ催促があったのでやむなくでかけていった。……それは夕餉のあとだったが、一刻ほどすると赤い顔をして帰った。

「あらおよばれだったんですか」

「なにそうでもないんだが」上へあがるとき源六はふらふらした、「……これはひどく酔った」

「たいそうあがったのね、臭いわ」

「水を貰おうかな」

「床がとってありますから横におなりなさいな」

おせんはお祖父さんを援けて寝かしながら、老人が自分のほうを見ようとしないのに気づいた。