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やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《柳橋物語(やなぎばしものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,300 字 · 202 頁
久造はそこでまた忙しげに汗を拭いた、「……医者はいろいろ診たが、ごく軽い卒中だから案ずることはない、じっとして静かに寝ていればすぐ治るだろう、こう云って薬を置いて帰った、そういうわけなんだから決して心配することはない、わかったなおせんちゃん、決してよけいな心配はしなさんなよ」
おせんは乾いてくる唇を舐め舐め、黙って頷きながら聞いていた。そして彼らが薬を置いて去るときも、
「色いろおせわさまでした」
と云うだけが精いっぱいだった。……源六は微かに鼾をかきながら眠っていた、そっとして置くようにと云われたので、呼び起こしたいのをがまんしながら、おせんはじっと枕許に坐っていた。ほんとうに病気は軽いのだろうか、もしやこのままになってしまうのではなかろうか、たとえ死なないでも、卒中といえば寝たきりになることが多いという、そんなことになったらどうしよう、どうして暮していったらいいだろうか。幾たび考えても同じことを、おせんは繰り返し考え続けるのだった。然しやがて食事をしていないことに気づき、朝まで寝られないのだからと、しずかに立って膳に向ってみた。もちろん喰べられはしなかった。