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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 頁

青空文庫

「次郎、早くお出し、どこへかくしたんだね。」

次郎は、しかし、そうなるとかえって落ちついた。彼は徹頭徹尾とぼけ返って、「僕知らないよ」を繰りかえした。

捜索は、座敷や、茶の間や、台所にまで拡がっていった。しかし、幸いなことに、便所の中まで探して見ようとする者は、誰もいなかった。

証拠があがらない限りは次郎の勝利である。嫌疑がいかほど濃厚であろうと、それはかれの知ったことではない。

時間は刻一刻と経った。彼はますます落ちついた。

そして恭一は、本がなくては嫌だと言って、とうとうその日学校を休んでしまったのである。

騒ぎがひととおり片づいてからも、重くるしい空気が永いこと家の中に漂った。

お民は次郎の顔さえ見ると、ぐっと睨めつけた。そして、幾度となく離室に行ったり、台所に行ったりして、お祖母さんやお糸婆さんと、ひそひそ立ち話をした。恭一は、泣っ面をしながら、たえずその尻を追いまわしていた。

次郎は、なるだけお民に近寄らない工夫をした。しかし、それとなくみんなの動静を窺うことを怠らなかった。とりわけ便所に出入りする人たちの顔つきに気をつけた。そしておりおりいやに狎々しい声で、恭一に話しかけたりした。