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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 頁

青空文庫

七 玉子焼

同時に、恭一と俊三とに対する憎悪の念が、冷たく彼の胸の底ににじむのを覚えた。

七 玉子焼

「次郎、また一人でそんな所にいるのかい。ほんとに、どうしたっていうんだね。早くこちらに来て、お父さんにご挨拶をするんですよ。」

お民に、そう声をかけられた時には、次郎は、暮れかかった庭の木立の間を、一人でぶらつきまわっていたのであった。

父の俊亮は、猿股一つになって、お民に蚊を追わせながら、座敷の縁で酒をのんでいた。そのそばには恭一も俊三も坐っていた。

次郎にとっては、彼の父は、まだ何とも見当のつかない存在であった。というのは、父は、この村から三四里も離れたある町で小役人を勤めていて、土曜から日曜にかけてしか帰って来なかったので、次郎は里子時代に、めったに彼と顔をあわせる機会がなかったし、まして、彼に言葉をかけて貰った記憶などほとんどなかったからである。

次郎は、しかし、父の顔つきだけは、いつとはなしに、はっきり覚えこんでいた。そして、その顔は、たしかに家じゅうの誰のよりも親しみやすい顔だった。むろん、お浜の亭主の勘作などにくらべると、ずっとやさしそうに思えたのである。