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しけいのまえ
死刑の前
幸徳 秋水
線上閱讀幸徳 秋水《死刑の前(しけいのまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,243 字 · 23 頁
そのうち、あるいは死よりも劣った不幸の人、もしくは醜辱の人を出すことがなかったであろうか。生死いずれが彼らのために幸福であったか。これは問題である。とにかく、彼らは、一死を分として満足・幸福に感じて屠腹した。その満足・幸福の点においては、七十余歳の吉田忠左衛門も、十六歳の大石主税も、同じであった。その死の社会的価値もまた、寿夭(長命と短命)の如何に関するところはないのである。
人生、死に所を得ることはむつかしい。正行でも重成でも主税でも、短命にして、かつ生理的には不自然の死であったが、それでも、よくその死に所を得たもの、とわたくしは思う。その死は、彼らのために悲しむよりも、むしろ、賀すべきものだと思う。
四
そうはいえ、わたくしは、けっして長寿をきらって、無用・無益とするのではない。命あっての物種である。その生涯が満足な幸福な生涯ならば、むろん、長いほどよいのである。かつ大きな人格の光を千載にはなち、偉大なる事業の沢を万人にこうむらすにいたるには、長年月を要することが多いのは、いうまでもない。
伊能忠敬は、五十歳から当時三十余歳の高橋作左衛門の門にはいって測量の学をおさめ、七十歳をこえて、日本全国の測量地図を完成した。