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しけいのまえ

死刑の前

幸徳 秋水

線上閱讀幸徳 秋水《死刑の前(しけいのまえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,243 字 · 23 頁

青空文庫

第一章 死生

第二章 運命

第三章 道徳―罪悪

第四章 半生の回顧

第五章 獄中の回顧

第一章 死生

第一章 死生

第二章 運命

第三章 道徳―罪悪

第四章 半生の回顧

第五章 獄中の回顧

第一章 死生

一

わたくしは、死刑に処せらるべく、いま東京監獄の一室に拘禁されている。

ああ、死刑! 世にある人びとにとっては、これほどいまわしく、おそろしい言葉はあるまい。いくら新聞では見、ものの本では読んでいても、まさかに自分が、このいまわしい言葉と、眼前直接の交渉を生じようと予想した者は、一個もあるまい。しかも、わたくしは、ほんとうにこの死刑に処せられんとしているのである。

平生わたくしを愛してくれた人びと、わたくしに親しくしてくれた人びとは、かくあるべしと聞いたときに、どんなにその真疑をうたがい、まどったであろう。そして、その真実なるをたしかめえたときに、どんなに情けなく、あさましく、かなしく、恥ずかしくも感じたことであろう。なかでも、わたくしの老いたる母は、どんなに絶望の刃に胸をつらぬかれたであろう。

されど、今のわたくし自身にとっては、死刑はなんでもないのである。

わたくしが、いかにしてかかる重罪をおかしたのであるか。その公判すら傍聴を禁止された今日にあっては、もとより、十分にこれをいうの自由はもたぬ。