輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ししゃのしょ

死者の書

折口 信夫

線上閱讀折口 信夫《死者の書(ししゃのしょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 62,340 字 · 126 頁

青空文庫

岩窟は、沈々と黝くなって冷えて行く。

した した。水は、岩肌を絞って垂れている。

耳面刀自。おれには、子がない。子がなくなった。おれは、その栄えている世の中には、跡を貽して来なかった。子を生んでくれ。おれの子を。おれの名を語り伝える子どもを――。

岩牀の上に、再白々と横って見えるのは、身じろきもせぬからだである。唯その真裸な骨の上に、鋭い感覚ばかりが活きているのであった。

まだ反省のとり戻されぬむくろには、心になるものがあって、心はなかった。

耳面刀自の名は、唯の記憶よりも、更に深い印象であったに違いはない。自分すら忘れきった、彼の人の出来あがらぬ心に、骨に沁み、干からびた髄の心までも、唯彫りつけられたようになって、残っているのである。

万法蔵院の晨朝の鐘だ。夜の曙色に、一度騒立った物々の胸をおちつかせる様に、鳴りわたる鐘の音だ。一ぱし白みかかって来た東は、更にほの暗い明け昏れの寂けさに返った。

南家の郎女は、一茎の草のそよぎでも聴き取れる暁凪ぎを、自身擾すことをすまいと言う風に、見じろきすらもせずに居る。

夜の間よりも暗くなった廬の中では、明王像の立ち処さえ見定められぬばかりになって居る。